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【会社・個人間のお金の貸し借り(法人税)】


1.会社が個人からお金を借りた場合
例えば運営資金が不足したため、同族会社の社長から100万円借りました、なんてこと、中小同族会社であれば日常茶飯事だと思います。
こういったケースで問題になるのが「支払利息」です。

例えば同じお金を銀行等から借りようとすれば、銀行はもちろん、利息を付します
これを会社内の個人から借りた場合、利息を付してもよいのでしょうか?
むしろ、利息を付さないと何か問題が生じるでしょうか?

結論としては「適正利率以下の金利での利息であれば問題がない」と思われます。

個人は会社と違って、会社の利益を追求して働く役員、社員等もありますが、個人は基本的には利益追求のみを目的としたものでないと解されるからと考えられます、また、個人所得の計算上、みなし収入の概念もありませんので、適正利率以下、無利息貸付も問題とはならないと思われます。ただし、例外的に「同族会社の行為計算の否認」の規定を受ける判決も出ていますので、個人が会社にお金を貸し付ける場合は、合理性を立証できるものとすべきだと思います。

適正利率内であれば、非営業貸金として「雑所得」となりますが、適正利率以上でかつ、会社を操作できる権限のある役員が相手となるとそれが「役員報酬」と解され役員側は「給与所得」に加算され源泉税の問題ともなり、法人側は臨時支払の役員報酬として損金不算入となる可能性が出てくるのです。

雑所得であれば所得税法において給与所得者が給与以外の従たる所得がある場合、その従たる所得が20万円以下であれば確定申告不要という規定(所得税法第121条)があるのでその範囲内の利息であれば個人は無税で利息を受けれるのですが、給与所得者が給与加算された場合は、源泉所得税が間違いなく加算されることになります。


2.個人が会社からお金を借りた場合
会社は個人と違い、基本的には利益を追求するために存在する組織であるため、上記1とは違い、無利息では許されないと思われます。
適正利率以下での貸付部分を寄附金とみなされます。(法人税法第37条)
寄附金については一定額しか損金に算入できないのに対し、寄附金と同額の受取利息が計上されるため、結果として税金を多く支払う必要が出てきます。

(仕訳)
寄附金 xxx / 受取利息 xxx

また、それが自社役員に対する貸付であったのであれば、それが役員報酬と解され、臨時支払の役員報酬の損金不算入に加え、役員側は給与所得として源泉税がかかるというダブルパンチとなる可能性もあります。(相手が役員以外の社員であれば給与加算で損金算入ですが。)

ただし、貸付先が取引先で、無利息貸付をする対価として取引価額が安くなっている等、利益追求法人として合理的な行動と認めうる事実がある場合は、無利息貸付でも大丈夫なのではないかと思います。



★無利息貸付が許される場合
所得税法基本通達 (課税しない経済的利益……金銭の無利息貸付け等)
36−28 使用者が役員又は使用人に対し金銭を無利息又は36−49により評価した利息相当額に満たない利息で貸し付けたことにより、その貸付けを受けた役員又は使用人が受ける経済的利益で、次に掲げるものについては、課税しなくて差し支えない。(平11課法8−11、課所4−23改正)

(1) 災害、疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人に対し、その資金に充てるために貸し付けた金額につき、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益

(2) 役員又は使用人に貸し付けた金額につき、使用者における借入金の平均調達金利(例えば、当該使用者が貸付けを行った日の前年中又は前事業年度中における借入金の平均残高に占める当該前年中又は前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率をいう。)など合理的と認められる貸付利率を定め、これにより利息を徴している場合に生じる経済的利益

(3) (1)及び(2)の貸付金以外の貸付金につき受ける経済的利益で、その年(使用者が事業年度を有する法人である場合には、その法人の事業年度)における利益の合計額が5,000円(使用者が事業年度を有する法人である場合において、その事業年度が1年に満たないときは、5,000円にその事業年度の月数(1月未満の端数は1月に切り上げた月数)を乗じて12で除して計算した金額)以下のもの


★適正利率とはいくらか?という問題

(1当該金銭が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率(所得税法基本通達36−49(利息相当額の評価)より改編)

(2)(1)以外の場合には、貸付けを行った日の属する年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法第15条第1項第1号の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4%の利率を加算した利率(その利率に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)により評価する。(所得税法基本通達36−49(利息相当額の評価)より改編)

(3)金銭の貸付けに係る通常の利率については、貸主の借入状況や市中金利の動向等の事情を総合勘案して適正利率を算定することが原則であり、各借入金の借入利率に基づく平均借入利率をもって適正利率とすることに合理性があると解されるところ
(裁決事例集 No.72 - 382頁より改編抜粋)

金融機関における金利を参考に、金融機関から借りる時より気持ち少なめに設定をすれば税務署にたずねられた時も安心だと思います。

 

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