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【所得税法における低額譲渡とは?(所得税)】


1.対個人間の低額譲渡の必要性
所得税法における低額譲渡とは、さすがにこんだけ安い価格での売買はありえないだろう、という観点から租税回避行為を防止する規定です。

例えばAさんからBさんに、時価(市場価格)100万円する壷(50万円で購入)を10万円で売ったとします。

通常のマーケット取引において、ありえない取引です。

これを成立させるとすれば

Aさんの譲渡所得;10万円△50万円=△40万円
Bさんの壷購入価額:10万円

これではさすがにおかしいですよね?
Aさんは大きな譲渡所得のマイナスが発生するため、他の譲渡所得があるとすれば通算することが出来ますし、Bさんがこの壷を売買する業者であるとすれば、大きな含み利益をかかえることができます。

上記のような、不合理な取引を正当化させないのが、この所得税法における低額譲渡の概念です。



2.個人間低額譲渡の内容
それでは上記のような取引をどのように合理的とするかが問題となります。
まずは売り手のAさん、取得価額よりも低価格で販売するなんて、どう考えたってありえない。
なので、取得価額以下での販売はなかったものとして、譲渡損失の計上を認めません。

続いてBさん、
著しく低い価額を時価の50%未満と考えるため(所得税法施行令第169条)、Bさんは著しく低い価額で譲渡を受けたこととなります。

そのため、時価と売買価額の差額(100万円△10万円=90万円)はAさんから贈与を受けたものとみなされ、贈与税の課税対象となります。

また、取得価額については、Aさんの取得価額(50万円)を引き継ぐこととされるため、Bさんの譲渡益の計上についての対策もされているのです。

なお、譲渡対象資産の価額については土地以外については相続税評価額(相続取得時の評価)、土地等については原始取得者の取得価額が認められることとなります。



3.個人が法人への低額譲渡
その低額譲渡の相手が法人の場合ですと、贈与というカタチではなく、受贈というカタチとなります。
上記における差額が受贈益となり、受贈側の法人に法人税が課されることとなります。

ただし、それが同族会社であれば「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定により、その実態を考慮して、上記基準だけではなく、税務当局の判断に委ねられてしまう可能性があることも視野に入れる必要があるでしょう。

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