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税法の勉強部屋┃所得税

【年末調整とは?(所得税)】


1.簡単に言えば
給与所得者の確定申告です。
毎月見積り額で給与天引きされる所得税額はあくまでも見積り額なので、それを正しい金額に計算し直すのです。

ちなみにこういった早見表を見て源泉徴収をすることによって誰でも源泉徴収事務ができるようになっています。

2.なぜ毎月源泉徴収をする必要があるのか?
法人であれば源泉徴収をしませんが、給与所得者は源泉徴収されます。
法人であれば国に登記されていますし、逃げることは出来ませんが、給与所得者である個人は万が一海外逃亡等されてしまったら所得税をとり損ねてしまうからです。

源泉徴収されるのは個人が故です。

3.年末調整の調整事項とは?
毎月の源泉徴収は年始時点の状況により行います。
そのため
・ その年にいくら保険を払ったか?(生命保険料控除、損害保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の額が把握できない)
・年中に扶養等人的要因に変化が出る可能性がある(結婚・離婚による配偶者控除の異動、出産・死亡による扶養の異動等)

所得税額が正しく判定されるのはあくまでも年末なので、それまでは正しい所得計算が出来ないためです。

4.年末調整しきれない部分は?
・給与所得者の収入金額が2,000万円以上の人は年末調整の対象から外れ、確定申告をする必要があります。
年末調整は大多数の一般給与所得者を対象としたもので、会社が代行して申告業務を行うものですが、収入金額2,000万円以上の富裕層については出る税額もそれなりに大きいですし、個人資産もそれなりにあると考えられますので、別途しっかりやってくださいということでしょう。

・@医療費過多、A災害盗難等被害者、B特定期間への寄付者、C住宅等ローン購入初年度の者については年末調整では調整できないので、別途確定申告をする必要があります。
これは事務手数とその重要性より、年末調整という会社代行業務では収まりきらない内容と考えられるからだと思います。

ちなみに住宅等をローンで購入した者は2年目以降はローンの残額だけを把握することとなるため、年末調整のみの手続きで大丈夫です。

・給与以外の所得がある者でその給与以外の所得の金額が年額20万円以上の場合は確定申告をする必要があります。年末調整ではあくまでも給与所得しか所得税の計算ができないため、別所得については確定申告をする必要があるのですが、年額20万円未満である場合は、少額不追求の観点でしょうか?確定申告義務を負わないとされるため、確定申告をする必要もありません。

ただし、金融機関利息収入や配当収入、一定の株式売買取引等については収入時点で基本的には収入時点において所得税額が確定されているため、確定申告も不要です。

・「給与所得者の扶養控除等申告書(通称マルフ)」を提出していない者は年末調整の対象から外れます。
主たる給与等の支払者に対して給与所得者はマルフを提出するため、マルフを提出していない者は月々差っ引く源泉所得税額は乙欄という、マルフを提出している甲欄を使う者よりも多い金額で源泉されることとなります。
年末調整は主たる支払者が行うものであって、マルフを提出していない者についてはマルフを提出した支払者にて年末調整を行ってもらい、乙欄給与分については確定申告にて本来の税額の確定、乙欄分については大概多目に徴収をしているため、確定申告にて過大源泉所得税を還付してもらう手続きが必要になります。


5.年末調整とは?
母数の多い給与所得者の所得計算を簡便化させるための徴税業務簡便化のための手続きです。
基本申告納税方式という納税者自ら申告して税額を確定させるというのが所得税額計算の基礎にあると思うのですが、個々に任せていたら徴税漏れが必須だということを考慮し、会社に徴税義務を代行させているという訳です。

年末調整で得をするのはいちいち申告する必要の無い給与所得者と徴税業務を会社に押し付けることのできる税務当局です。
なので、年末調整ってのは会社がボランティアで税務当局を助ける手続きということになりますね。

まぁ大事な大事な従業員の徴税義務ですので、会社はボランティアですが、頑張って年末調整業務を行いましょう。
国家収入の大きな部分を担う給与所得者の税金の計算ですから。

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